超人的な能力を持つ殺し屋集団「killer7」を主人公として、怪物的テロリスト集団「笑う顔」との戦いを描くアクションアドベンチャーゲーム。ディレクター須田剛一の作家性が強く出た作品である。難解で謎めいたストーリーやスタイリッシュなキャラクター造形、トゥーンレンダリングを用いたクールな映像表現が特徴。
ゲームシステムは主にサードパーソン・シューティング形式で、リアルタイムの戦闘とマップ移動、およびマップ上でのアイテムの取得や謎解きによって進行する。須田剛一のghmでの過去作『シルバー事件』『花と太陽と雨と』と比較して格段にアクション性が強いが、プロデューサーであるカプコンの三上真司や小林裕幸の監修もありアクションゲームとしても破綻ない造りになっている。
独特の端的なセリフ回しと人を食ったようなユーモア、残酷表現や性描写などショッキングな演出といった、須田剛一作品に共通する要素は本作にも強く現われている。特に暴力表現や性描写などの過激な表現のためCEROレーティングで18歳以上対象(コンテンツアイコン「セクシャル」)とされた(2006年6月からはレーティング方針の改定により「Z 18歳以上のみ対象(コンテンツアイコン「暴力」)」へと変更されている)。ハードメーカーのレーティング基準の違いにより、ゲームキューブ版で描かれた虐待的な性行為の演出やグロテスクな傷痕の描写、性的な言語表現等がプレイステーション2版では隠蔽あるいは控えめな表現へと変更されている。
タイポグラフィの扱いには徹底したこだわりが貫かれており、常時アニメーションで蠢き続ける文字群、状況によって使い分けられた特徴的な書体などに顕著である。また本作ではメッセージの大半に片仮名のルビが振られており、このルビに当て字を多用することによって生まれる独自の言語感覚がテキストの大きな特徴となっている。特に常用された「殺る」と書いて「トる」と読ませる表現は、「殺」の文字が(この字である限りおよそ無差別に)常に出血を思わせる赤文字のアニメーションで表現されていることと相まって、プレイヤーに鮮烈な印象を与える。同種のアニメーション処理は他に「死」の字にも使われた。
ghmサウンドチームの高田雅史(メイン)と福田淳(サポート)による、落ち着いたアンビエント・サウンドからハードロックまでバラエティ豊かなBGMも特色で、オリジナルサウンドトラックとして『killer7 original sound track』がサイトロン・デジタルコンテンツより発売されている。
2002年11月4日の制作発表時点では、カプコンのゲームキューブ独占新作5タイトルのうちの1つという位置付けであり、プレイステーション2での発売は予定されていなかった。発表当初は2003年冬発売予定であったがその後延期され、2005年6月にプレイステーション2版との同時発売へと予定変更され、同年6月9日に発売に至っている。
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北米版は2005年7月7日、ヨーロッパ版は同年7月15日に発売。北米版では音声が元々英語だったためムービーやイベントシーンでテロップ表示されるテキストが省略されている。ghm作品では初の日米欧の世界的リリース作品であり、特に北米・ヨーロッパ圏での評価が高く、多くの賞を受賞している。
主なスタッフ
須田剛一(監督、脚本、ゲームデザイン、原案)
三上真司(製作総指揮、原案)
小林裕幸(プロデューサー)
川上智(メインプログラム、戦闘プログラム)
渡辺和寿(システムプログラム、イベントプログラム)
松崎昇(イベントプログラム、装飾プログラム)
山田巧(エフェクトプログラム)
佐藤慎也(イベントプログラム、メニュープログラム)
藤田至一(プログラム監修)
石坂明彦(ビジュアル監督、背景モデリング)
岸井一(背景モデリング)
木村俊行(背景モデリング)
北山克典(背景モデリング)
谷脇邦彦(人物モデリング)
山本広人(パス編集)
高田雅史(音楽監督、作曲)
福田淳(音響効果)
大原晋作(翻訳)
笹川晋弘(企画進行)
藤川敏浩(助監督)
久保寺良一(企画助手)
三宅拓巳(キャラクターデザイン)
XEBEC(「落日」「分身」アニメムービー)
デジタル・フロンティア(「雲男」アニメムービー)
ゲームシステム
ゲームの流れ
ゲームは全11話で構成される。各話はおおむね主人公の1人であるガルシアン・スミスが何らかの依頼を受ける所から始まる(この依頼は物語の進行上、最終的に果たされない、あるいは別の目的にすり替わる場合が多い)。プレイヤーはこの依頼を遂行するために、マップ上を移動しボスキャラクターの居場所まで進むことになる。マップの随所に(いわゆる雑魚キャラとして)「笑う顔」が登場し、プレイヤーキャラクターにダメージを与えようとするため、プレイヤーは逐次これを「殺(ト)り」(倒し)、あるいは回避しなければならない。
マップ上では「羈絆門(キハンモン)」や仕掛けがプレイヤーの行動範囲を制限しているため、これらを解除するためのアイテムを謎解きや特殊能力の利用によって入手しなければならない。羈絆門はマップの中途に存在するいわゆる中ボスの居所であり、入手した「魂弾(タマタマ)」を羈絆門の門番に渡すことでプレイヤーは中ボスとの対戦権を得る。中ボスを倒すと羈絆門は消失し、マップのより先へ進むことが可能になる。またマップ上で手に入る「微妙な造形物(アイテム)」や「指輪(リング)」は主にマップ中の障害物を通過するために使用される。
マップ中には「ハーマン部屋」と呼ばれる特殊な空間が点在し、ここでゲームデータのセーブやプレイヤーキャラクターのレベルアップを行なうことができる。また、マップの各所には「残留思念」が点在しており、これらのメッセージが謎解きやストーリーの理解のヒントとなる。
マップ上の特定の地点に到達すると、自動的にデモシーンが再生されストーリーが進行する。デモシーンは章ごとに意図的に画風が変えられており、時にはセルアニメーションであり時にはポリゴンによるCGアニメーションとなる。最終的にボスキャラクターと戦いこれを殺ることで、デモシーンを経由してその回は終結する。
人格
プレイヤーキャラクターである「スミス同盟」は、スミス姓を持つ8種類の「多層人格」によって構成されている。多層人格はいわゆる多重人格とは異なる一種の超能力で、人格交代によってその身体も変身するのが特徴である。
ゲーム中では、一部のイベントを除く任意の場面で人格を交代できる。ただし各話の開始直後は多くの人格が休眠状態にあるため、一定数の「笑う顔」を殺るか、「黄×黒」のミクロスマイルを殺って人格を覚醒させる必要がある。各人格はそれぞれ異なる特殊能力を持ち、攻撃方法や操作性にも差異があるため、状況に応じた使い分けが要求される。
スミス同盟の最上位にあるハーマン・スミスには、イベント上の強制的な交代でしか人格交代できない。また、交渉と「死体回収」を役割とするガルシアン・スミスは、ストーリー上の必要または他の人格の死亡の際に強制的に交代される。死亡した人格をガルシアンが回収すれば「蘇生」できるが、ガルシアン本人が死ねば「絶命」(ゲームオーバー)となる。ガルシアン自身はゲーム進行のための指輪やアイテムを利用できないため、イベント時以外の主要なゲーム進行はハーマンとガルシアンを除く下位人格の6人で行う事になる。
移動
本ゲームの移動システムはサードパーソン・シューティングゲームとしても特殊であり、予め決められた分岐点(ジャンクション)以外での方向転換は認められていない(180度の反転を除く)。プレイヤーが移動ボタンを押し続けることにより、プレイヤーキャラクターは決められたルートに沿ってジャンクションまで移動し続ける。ジャンクションでは主に2〜3程度の選択肢の中から進路を選択し、そこからは再びルートに沿った移動が始まる。
本作ではこの限定的なシステムにより、移動中の映像も常に製作者の意図通りの構図・カメラワークで表示している。また移動方向のアナログ的なブレが減ることによって、このゲーム独特のハイテンポなリズムが形成されている。
カメラの構図がシステム側に委される弊害として、移動する敵キャラクターが地形やキャラクターに遮られて見えなくなることが挙げられるが、このゲームの場合敵は出現の際にプレイヤーの注意をひく笑い声を発し、また攻撃時は画面が三人称視点から一人称視点にシフトするため目立った問題にはなっていない。
戦闘
敵である「笑う顔」の大半は「都市迷彩」(その定義は定かではないが、ゲーム中では光学迷彩状に表現される)を備えるため、出現時はほぼ透明に映り目視が困難である。多くの場合プレイヤーは「笑う顔」の笑い声を聴くことでその存在を知覚する。
ボタン操作で攻撃態勢をとり(この時点で画面が一人称視点に切り替わる)「索敵」することで光学迷彩は無効化される。この状態で目視により照準を合わせ攻撃することで「笑う顔」にダメージを与えられる。
「笑う顔」の体に重大なダメージを与える(「部位破壊」)あるいは殺ると、「薄い血」及び「濃い血」(後述)が手に入る。また「笑う顔」にはそれぞれ「腫瘍」と呼ばれる弱点があり、この部位を攻撃すると一撃で駆除できる。複数の「笑う顔」を連続して腫瘍を撃ち抜いて殺ると、「コンボ」効果によってより多くの血液が獲得できる。
入手した「薄い血」は、体力回復や特殊攻撃のエネルギー源として使われる。「濃い血」はストックされた後、ハーマン部屋において「血清」として精製され、プレイヤーキャラクターのレベルアップのために消費される。精製される血清の量には上限値が設定されているため、プレイヤーはどの人格に血清を配分するか効率を考える必要がある。
モード
初期状態ではプレー開始時に、「敢闘」と「死闘」の2モードから難易度を選択できる。
「敢闘」では「笑う顔」の体力が低い上に、索敵するだけで自動的に腫瘍に照準が合う(クリティカルロックオン)ため、アクションの難易度は低い。またマップ画面に直接的なヒントが表示される、回収できる血液の上限値が高い等、プレー進行が簡単になる設定となっている。一方「死闘」では索敵しただけでは腫瘍の位置は分からず、(ある程度レベルアップしない限り)クリティカルロックオンも行なわれない。腫瘍は照準が腫瘍の位置に合った時に初めて表示されるシステムになっている。
『Hand in killer7 -Kill the past, Jump over the age.-』[1](以下Hand in killer7)においてディレクター須田剛一は、本来「死闘」モード級の難易度がゲームとして妥当であると考えていたが、三上真司プロデューサー(カプコン)のアドバイスによってかなり簡単な「敢闘」モードの難易度調整に至ったと述懐している。
ゲームを一度クリアすると、隠し要素として「Killer8」モードの選択権が与えられる。「血闘」と称されるこのモードでは、「笑う顔」の体力が多く移動速度も速い上に、一切腫瘍の位置が目視できない。所持できる「薄い血」も上限値が低く定められており、これらの理由からクリアは困難を伴う。また精製できる血清量も非常にタイトなため、レベルアップには緻密な計画性が求められる。なお「Killer8」では特別に交代できる多層人格として、若き日のハーマン・スミスの姿である通称「ヤング・ハーマン」が選択できる。
「Killer8」をクリアすると、さらに隠し要素である「Hopper7」モードが選択できる。この「蝗闘」と名付けられたパロディ版的なモードでは、ヘヴンスマイル・ランニングスマイルの代わりに(ghmのシンボルマークを模した)バッタの着ぐるみを着た「ホッパーマン」が敵となる。ただし「Hopper7」で遊べるのは、序章「天使」のみである。 「Killer8」同様に腫瘍の位置が目視できない設定になっているが、主要な敵であるホッパーマンがきわめて弱く腫瘍の目視の必要性が薄いため、難易度自体は低くなっている。